2018年、がん免疫療法につながるたんぱく質「PD-1」の発見で本庶祐・京都大学特別教授が今年のノーベル賞を受賞しました。

本庶特別教授は賞金を活用して基金を設立し、生命科学分野の若手研究者を支援する考えを明らかに。時期は未定ですが、PD-1を利用して開発された薬の特許使用料も加え、将来的に1000億円規模を目指すと言いました。

若い研究者を取り巻く研究環境は資金面などで悪化している現状があり、基金の対象は、生命科学分野で基礎研究に取り組む若手研究者とします。本庶氏は「1000億円規模が実現すれば、年利を4%とすると年間40人(1人当たり1億円)を支援できる計算だ。国の予算からすればわずかだが、一石を投じたい」と話しました。

このように、本庶氏はノーベル賞を受賞してもおごらず、記者会見から分かる通り誠実に研究を行なっている方だという事を世間に示しました。
日本人がノーベル賞を受賞することはとても名誉なことです。
しかし、日本人は研究する人員は優れているものの、研究する設備や研究費が他国よりも劣っており遅れを取っていると言われています。
この記事では、ノーベル賞を受賞した本庶氏の発言から、ライフサイエンスに投資するべき理由を個人の見解ではありますが紐解いていきます。

ライフサイエンスとは

まず、ライフサイエンスという分野は日本語で生命科学と呼ばれている通り、生命を維持するための科学「人がいかに生きるということかを科学する」とも捉えられるでしょう。

分野としては広義ではありますが医薬品や医療機器等のヘルスケア関連です。

 

ライフサイエンスの現状

ライフサイエンスは「人がいかに生きるということかを科学する」という分野であると前述しましたが、昨今の世界ではテクノロジー企業や新規企業が市場に参入してきたこともあり、近い将来ほかの分野よりも遅れを取ってしまうと懸念されています。

 

ライフサイエンスの最新レポート

ライフサイエンスについてはこちらのEYによるレポートが情報を考察していますので英語ができる人は読んでみると面白いです。

https://go.ey.com/2p4iamZ

一部を抜粋している日本語の記事がこちらになります。

https://mainichi.jp/articles/20180323/pls/00m/020/512000c

 

世界的に見てもライフサイエンスの利益は減少している

先ほど載せたEYのレポートでは、「Fortune 500に名を連ねるライフサイエンス企業が、既存のサービスだけではなくより良い新薬の開発や新型医療機器の開発をしていかなければ姿を消す」と書かれていました。
また、ライフサイエンス業界では、消費者の期待への変化、つまり利便性や低価格なものなどの普及に対応していかなければなりません。
そのためには、今までのデータをもとに新たな企業戦略、イノベーションを構築していくことを求められています。
でなければ、Fortune 500に載っているライフサイエンス企業の75%以上が2023年までに、Fortune 500から姿を消している恐れがあるとされています。
フォーチュン500(Fortune 500)は、アメリカ合衆国のフォーチュン誌が年1回編集・発行するリストの1つである。 全米上位500社がその総収入に基づきランキングされる(ただし、物品税の影響等を排除するため、多くの企業の収入は修正されている)。
出典:wikipedia

http://fortune.com/fortune500/

 

 

 

本庶氏のライフサイエンスに対する意見

また、本庶氏は記者会見のなかで「ライフサイエンスに」ついての質疑応答で答えるシーンがありました。

その中で印象的なコメントが以下のようになります。

Q:日本の研究の方向性についてどう思うか? また、日本の製薬企業についてどう感じているか?

 

「生命科学というのは、まだ私たちはどういう風なデザインになっているかを十分理解していない。AIとか、ロケットをあげるというのはそれなりのデザインがあり、ある目標に向かって明確なプロジェクトを組むことができる。しかし、生命科学は、ほとんど何も分かってないところで、デザインを組むこと自身が非常に難しい。その中で応用だけやると、大きな問題が生じると私は思っています。つまり、何が正しいのか。何が重要なのかわからないところで、『この山に向かってみんなで攻めよう』ということはナンセンスで、多くの人にできるだけ、たくさんの山を踏破して、そこに何があるかをまず理解したうえで、どの山が本当に重要な山か、ということを調べる。まだそういう段階だと思います。あまり応用をやるのでなくて、なるべくたくさん、僕はもうちょっとばらまくべきだと思います。ただばらまき方も限度があってね、1億円を1億人にばらまくと全てむだになりますが、1億円を1人の人にあげるのではなくて、せめて10人にやって、10くらいの可能性を追求した方が、1つに賭けるよりは、ライフサイエンスというのは非常に期待を持てると思います。もっともっと、たくさんの人にチャンスを与えるべきだと思います。特に若い人に」

 

「製薬企業に関しては、日本の製薬企業は非常に大きな問題を抱えていると思います。まず、数が多すぎます。世界中、メジャーという大企業は20とか30くらいですが、日本は1つの国だけで、創薬をやっているという企業だけで30以上ある。これはどう考えても資本規模、あらゆる国際的なマネジメント、研究で、非常に劣ることになる。なおかつ、日本のアカデミアには、結構いいシーズ=研究の種があるのに、日本のアカデミアよりは外国の研究所にお金をたくさん出している。これは全く見る目がないと言わざるをえないと思います」

出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181002/k10011654191000.html

このように現在の日本における研究に対する処遇の懸念と、これからの「ライフサイエンス」に対する重要性を述べられています。

日本の基礎研究費は低いという現状

日本の基礎研究費用は低いという現状があります。

2018年8月には、日本の大学研究費はドイツに抜かれて世界で4位に陥落したと文部科学省から発表されました。

また、現状で主要国は研究者の数が増えている一方で、研究者に育つ修士号や博士号取得者数も人口当たりの数値が主要国の中で唯一減少しています。

この統計から見ても日本の科学技術力低下に歯止めがかかる余地はありません。

 

大学部門の研究費

やはり大学研究費でトップを争っているのは、アメリカと中国です。

いずれも、アメリカ6,77兆円、中国3,0兆円と高く、次いでドイツ2,17兆円、日本2,08兆円となっています。

また、研究者の数に関しては、修士号や博士号取得者数がドイツは増えているのに対し、日本は減少しています。

予算面・人員面共に日本の科学技術力の将来の見通しは厳しいことがわかります。

 

日本の研究開発費総額の推移が経済産業省から発表されていますので興味のある方は以下のリンクからどうぞ。

 

 

 

ライフサイエンス企業への投資

「ライフサイエンス企業に投資をしない国は遅れをとる」

印象的な言葉を本庶氏は言っていましたね。

ライフサイエンス企業といえば、日本では太田製薬やアステラス製薬、また今回のノーベル賞で注目を集め株価も上昇した小野薬品工業など合わせて数百社あると言います。

 

一方でベンチャーでもライフサイエンスやヘルスケアを事業としている会社は多いですが、日本はベンチャーに対しての支援が手薄です。

 

このことより、ライフサイエンス業界では研究開発費が減少していることを受けて、本庶氏は上記した発言をしたのでしょう。

 

世界的に老化が進み、世はまさに超高齢化社会となるわけです。

そのため、病院で治療を行う「患者」という概念から、医療のサービスを嗜好として嗜む「ヘルスケアコンシュマー」という概念に移り変わるとされています。

そのため「人がいかに生きるということかを科学する」というライフサイエンスの基軸に話が戻ってきます。

テクノロジー産業は若者向けのものが多いですが、超高齢化社会となったら高齢者向けのサービスがニーズとして求められてきます。

 

そのために、ライフサイエンス業界への投資は必要でしょう。

 

2020年にはこうなっているという記事を見つけまして、非常にためになると感じたので興味がある方は以下の記事を読んでみてください。

 

 

 

最後に

今回の本庶氏のノーベル賞受賞で日本中が希望を持った反面、日本の研究に対する考えをもう一度改め直すべきではないかという意見も出てくるのではないでしょうか。

 

「持続可能な社会」を目指そうとしている日本ですが、そのままでは先進国の中でも遅れを取り、もしかしたらどんどん衰退していくかもしれません。

 

とはいえ、研究意欲も高い国民性がありますので世界でも通用する技術力は落ちぶれません。

 

ライフサイエンスという、我々の健康や生命に関わる大切な分野。

それを今回のノーベル賞受賞を通して国民が少しでも知る良いキッカケになったのではないでしょうか。

 

 

 

 

最後に、このノーベル賞受賞の件をわかりやすく要約した謝辞がありましたので掲載しておきます。

京都大学高等研究院特別教授 本庶佑先生のノーベル生理・医学賞受賞をこころよりお慶び申し上げます。
我々製薬協およびその加盟会社は、革新的な医薬品を切望する患者さんからの期待に一日も早く応えることを使命としています。その使命を全うするためには、イノベーションを継続的に成功させることが不可欠であり、特にアカデミアおよび基礎研究分野との有機的な連携が鍵となっています。この意味においても、今回、本庶先生の免疫チェックポイント分子PD-1の発見が、革新的な医薬品として世に誕生し、がんに苦しむ世界中の患者さんに画期的な治療効果をもたらしたことは真に賞賛される素晴らしい成果です。その恩恵を受けた患者さんを含め、多くの方々と喜びを分かち合うことができる受賞であると感じております。
画期的新薬の創出につながった今回の先生の業績がノーベル賞という形で評価されたことを契機として、ライフサイエンス分野のイノベーションを支援する機運を更に高めていけるよう、我々自身も新薬の創出に向けて不断の努力を続け、また、いっそう積極的にアカデミアとの連携を深め、イノベーションの実現に向けて共に邁進してまいります。

出典:製薬協

本庶佑(ほんじょ・たすく) 1942年、京都市生まれ。60年に京都大医学部に入学後、学部在学中から、日本の生化学のパイオニア的存在だった早石修教授(故人)の研究室に出入りし、門下生となる。71年に同大大学院を修了。

米国留学などを経て79年、37歳で大阪大教授に就任。84年に京大に移り、クラススイッチやPD-1などの免疫分野の研究で大きな成果を上げる。2005年に同大名誉教授、特任教授。17年5月から現職。神戸市の神戸医療産業都市推進機構理事長も務める。

朝日賞(82年)、ベルツ賞(85年)、ベーリング・北里賞(92年)、ロベルト・コッホ賞(12年)、京都賞(16年)など受賞多数。14年には、東洋のノーベル賞と呼ばれる台湾の「唐奨」を受賞した。00年に文化功労者に選ばれ、13年に文化勲章を受章した。

 

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